ウィングのように白い石の山があると聞いて、東京竹芝桟橋からジェットフォイルに乗りました。
 ほんとうに島のほとんどが白い石と白い砂できれいだったよ。
 パパのお目当てはコーガ石と言う世にも不思議な溶岩。
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ウィング 白亜の火山島 新島 を探訪する


新島はどこに行っても世界でもめずらしい泡だった溶岩「抗火石」(コーガ石)だらけ。

白亜の火山島 新島  美しい島だよ 是非ともいってみよう! 

 新島は大島、三宅島、ハワイ島などのように黒い溶岩(玄武岩)の島とは対照的に白っぽい溶岩(流紋岩)を主体とした火山島です。伊豆七島では式根島、神津島が似たような白っぽい溶岩の島です。
 白っぽいということは、溶岩の中で珪酸SiO
2(簡単に言えばガラスの成分)が多いということ。なぜ大島や三宅島が玄武岩を主体とし、新島などは流紋岩を主体とするのかは明快な説明をきいていません。しかし、2000年の三宅島噴火の時に、三宅島で生じた溶岩が新島に向かって移動していったという観測はヒントになるように思っています。
 白っぽい溶岩の火山は黒い溶岩の火山よりも荒々しい性質をもちます。
ハワイ島ではしょっちゅう噴火を繰り返していても人が死ぬことはほとんどありません。黒っぽい溶岩はさらさらとして流れやすく、溶岩がどろどろと流れるか、スプレーみたいに溶岩を噴き上げる(スコリアとなる)活動が多いので、比較的おとなしいのです。
 それに対して、ガラス分が多い白い溶岩のはガラスふきの時を見ればわかるように粘りけがあり、火山は雲仙普賢岳のように「溶岩ドーム」になったり、ガスがたまると大爆発を起こして「火砕流」を発生させます。
 新島は平らな様相を呈していますが、これは「溶岩ドーム」の集合体で、激しい火砕流などの噴火の形跡はあちらこちらで見られる地層に容易に見て取れます。

新島の噴火史
 新島は約5万年前には誕生したと考えらえています。小山真人先生によれば、平安時代仁和三年(887年)に伊豆の国が献上した「新生島」の絵図には火を放つ山として「銀岳」が描かれていたがこの絵は現存しないとのことです。この噴火を向山の噴火として考えるとつじつまがあうことが多いそうです。

 

コーガ石(抗火石)は向山山頂だけで採れるものです。
浮石性黒雲母流紋岩というのが学名で、風呂場の軽石(主に桜島産)と基本的にはよく似たものです。
 SiO2つまりガラスの成分が多い火山が噴火すると、発砲したガラスの泡ができます。新島のコーガ石は向山溶岩ドームが噴火した際に地表近くでビールの泡のように発砲した白い溶岩(流紋岩)だと思います。
 耐
火性、保温性があり、加工が簡単です。


山山頂の「モアイ?」像
もちろんコーガ石でできている。新島はどこに行ってもコーガ石の彫刻だらけ。中学生でもらくに彫刻ができるほと柔らかい。

新島村教育委員会の説明をそのままのせさせていただきました。
向山溶岩ドーム 石山展望台から式根島を見る
 式根島と地続きだった?
 もう一つおもしろいと思うのは、江戸時代初期まで新島と式根島は地続きだったという記録です。上の地図でも、向山と宮塚山の火山群とはかなりはなれた山で、新島本村がある低地は両火山の火砕物が海にたまって埋め立ててできた「火山による埋め立て地」ととれます。すると式根島と向山の間にも似たような「火山による埋め立て地」が存在していたとしてもうなずけます。
 新島と式根島の地続きを分断したのは1703年の元禄地震による津波でした。破局的大津波は火砕物の堆積物であった陸の橋を押しわたり、逆に引き波となったときには陸上に出ていたものの大半を海底に持ち去ったのではないでしょうか?こうして式根島と新島は海を隔てることになったのかもしれません。
新島ガラスアートセンターに行ったよコーガ石と新島ガラス 背景はコーガ石産地の向山  
新島ガラスアートミュージアムのおみやげコーナー

 新島ガラスとは、コーガ石を砕いて粉末状態にしたものを原料にしたオリーブ色のガラス。
 ふつうのガラスに比べるとやや扱いにくいが独特の色合いが美しいガラス。
 おみやげにどうぞ。

ウィングは新島ガラス作りを体験したよ!

 新島ガラスアートセンターにはウィングも入れてもらえました。そこでは新島ガラスの体験コースがあるとのこと。
 しかも「わんちゃんの足跡をガラスアートにします」とのこと。
 もちろん挑戦しました。ウィングのおみやげができたよ。

    新島ガラスアートセンターHP

新島村博物館
ぜひともお立ち寄りを!

小さい村なのに実に気合いの入った博物館。
かなり詳細な地学的説明からサーフィンまで、展示物は充実。
パパは大満足。
新島村に敬意を感じます。

他にお客さまがいなかったのでウィングは交渉してケージに入って見学しました。博物館見学にはケージと絶対ほえない(人に迷惑をかけない)しつけが必要です。

     新島村博物館ホームページ

う〜ん どこかで最近見たような??

新島の地層が見られる海岸沿いの場所に来たウィングは不思議な気持ちになりました。「最近どこかでにたような景色をみたような…」
 それは伊豆七島とはかけ離れた東北地方会津の「塔のへつり」です。似ているのはじつは当然なのです。「塔のへつり」もガラス分が多い(白っぽい)巨大な火砕流が湖を埋めた地層。それを風雨が浸食するとよく似た風景になるのです。


よく似ているなあ〜

「塔のへつり」は白い溶岩の火砕流が湖のようなものに一気に堆積し、それがやがて河川による浸食を受けた地形。
新島に黒い岩石の地層?

う〜ん…新島は白い岩石の島かと思ったら、この地層は大島みたいに真っ黒、しかも、細かい層になっていて大きさが違う岩石がいっぱい混じっている。

 新島にも黒いマグマ(玄武岩)の噴火があったのです。

 若郷火山の噴火によるものと思われます。

 

若郷火山の地層

 この地層は「ベース・サージ堆積物」と説明されています。

 浅い海に上がってきたマグマに水が入り込むと天ぷら油に水を注いだようなもので、瞬時に水蒸気になった水が膨張して天ぷら油を燃え上がらせての大爆発になります。
 すさまじく吹きすさぶマグマの嵐がこの地層をつくっていったと考えられます。

若郷の路頭

 若郷火山は新島にはめずらしい黒い溶岩の火山で、水面付近で水に触れて繰り替えしマグマ水蒸気爆発を起こしたのでしょう。

その火山はもう波に削られて姿が見えないようです

渡浮根展望台からの眺め
おすすめだよ

ここにあるコーガ石のアーチからは利島が見える。

伊豆・小笠原弧の連なりを示すおもしろい趣向だ。


羽伏浦海岸は白亜の砂浜

あ、ここにも「塔のへつり」がいっぱい!
この海岸ではガラス質の(流紋岩質の)白い砂がいっぱいできれいです。ハワイオアフ島の白い砂浜はよそから運んできたものですが、ここの白い砂浜は本物です!

おまけに、新島の低地をつくる地層が丸見え!

激しい火砕流などの地層が積み重なっています。

ウィングのまとめ
白いお砂のところをいっぱい歩いたよ。お船にものって楽しかったよ。でも、パパ、ママは露天温泉にはいっていたのにウィングは大好きな温泉にいれてもられないでつまんなかったよ。
それにしても、新島は白い砂ときれいな海の島だよ。
みんな行ってみてね。



新島の海の幸いっぱいの夕食

伊豆七島のお宿らしい朝食

まとめ 〜新島は東北地方に似ている?〜

・新島は白い溶岩(流紋岩)の島。
・海底噴火に始まり、いくつかの溶岩ドームが南北に連なったものです。

・羽伏浦海岸や真ん中の平らな土地は噴出物が海を埋めたててできたもので、式根島との間にも同様のものがあったという記録もあります。しかし、1703年の元禄地震の大津波で、こちらはなくなったしまいまいました。
・新島全体がほぼ流紋岩の(ガラス分が多い)粘りけのある溶岩ですが、向山の山頂にはビールの泡のようによく発泡した(二酸化炭素や水分が多かった)流紋岩が吹き出て、これが「抗火石」です。


・藤岡換太郎博士は、「1700〜1400万年前の東北地方は現在の伊豆・小笠原弧に似ていた」という考えを提唱しています。たしかに、新島で見た地形、地層を見ると、どことなく東北地方で見たような地層や風景があります。そして、東北地方はほとんどが海底や浅い海に堆積した火山の噴出物で、新島のような流紋岩質の白い地層もたくさん見ます。
・「かつての東北地方は現在の伊豆・小笠原弧に似ていた…」それをリアルに感じられるのが新島です。